体感音響研究所

ボディソニックの
臨場感再現効果技術


第1章 ボディソニックに
よるドキュメンタリー音な
どの臨場感再現効果


第2章 振動効果装置に
至る体感振動の概念と
技術の変遷


第3章 振動効果装置  
(Vibroeffect system)





ボディソニック プロセッサ
映画DVD用信号処理回路


エコニック、ボードスピー
カ、パネルスピーカ


ボディソニックの技術



 bodysonic.cc


ボディソニックの臨場感再現効果技術 

 
    第3章 振動効果装置(Vibroeffect system)詳細版
     − 振動感、衝撃感など、劇的な臨場感を再現する為のシステム −
            体感音響から振動効果装置(Vibroeffect system)へ
 
                  たいかん音響研究所 小松 明
 
1999年3月 .

 
1.体感音響システムの可能性と限界

 電車やSLの走る音、車のエンジン音、車などの衝突音、噴火や大砲などの爆発音、地震などでビルが崩れる音や山崩れの音、etc…。こうしたシーンの「振動感や衝撃感を伴う音で、十分な重低音成分が含まれている」などの条件が満たされていれば、これを体感音響システムで再生すると、通常のオーディオ装置では真似のできない臨場感を再現することができる。
 これらの効果から、科学万博などのイベントからアミューズメントなど、映像と組み合わせた様々な応用もされてきたが、十分な効果を出せないことも多々あった。
 この「十分な効果を出せない」問題を解決するために研究を行い、「体感音響システム」ではなく、「振動効果システム(Vibroeffect system)」を開発した。
 これから述べる「振動効果システム」を映画などに応用すると、迫真の臨場感・劇的効果を生む。アミューズメント、ゲーム、アトラクションなどでも大きな効果を発揮する。

1.1 ボディソニック・システム
 
 従来より、音楽などの音響信号の低音成分(約150Hz以下ぐらい)を電気−機械振動変換器によって機械的な振動に変換し、体感させながら音楽などを聴く「ボディソニック」がある。これらの研究・開発に30年余関わり、製品も世に送り出してきた。
 ボディソニックによる、体感音響振動のリラクセーション効果1-3)なども指摘され、これらの効果から近年、音楽療法への応用がなされ、心療内科領域、老人医学領域、末期医療領域、人工透析、成分献血、外科領域、歯科領域など医学分野で多くの臨床報告があり、注目されている4)
 また、ボディソニックを使用すると、爆発音や衝撃音などのドキュメンタリー音で“重低音域成分を十分に含む場合”には振動感や衝撃感をなど、迫真の臨場感を再現5)することもできるが、下記に述べるような不都合も生じる。

1.2 ボディソニックで ドキュメンタリー音などを再生するときに起る不都合
 
 劇的な臨場感の再現を期待して、さまざまなドキュメンタリー音をボディソニックを使用して再生してみると、いろいろな不都合に遭遇する。以下にいくつかの例を上げる。
 
●レーシングカーの音
 レーシングカーは、エンジン性能を低下させる消音器(マフラー)は付けない状態に近い為、かん高い音がする。多くの人はレーシングカーの場面で激しい振動感を期待するのに、かん高い低音成分の少ない音であるために、ボディーソニックはあまり振動せず期待する効果が得られない。
●地下鉄のホームの音 .
 地下鉄のホームに電車が入ってくると、レールの継ぎ目を通過するときに起こるガタンガタンという振動が、ホームの床、ベンチから身体に強く伝わってくる。しかしこのガタンガタンという音は、音量は大きいが比較的かん高い場合が多く、低音成分が意外に少ないことがある。このため、ボディソニックの振動は少なく、期待に反する効果しか得られない場合がある。
●ミサイルなどの爆発音 .
 ミサイルが落ちて爆発した様なシーンの音では、落ちた瞬間の音も、その後の轟音も連続的に起こるため、ボディーソニックで再生するとメリハリのない振動が続いて、落ちて爆発した瞬間での衝撃感などのがアクセントがなく、期待する効果にならないケースが多い。
 期待する効果の出せないドキュメンタリー音は、この他にも数多くある。
●ドラマ .
 ドラマなどでの主要な要素である台詞 (人声、特に男声は低音成分が多い)で振動を発生してしまい、著しく不自然な感じにしてしまうなどの不都合もある。また、ドラマなどでは背景音楽が多用されるが、最近の音楽は低音成分が多い。これに対してドキュメンタリー音では音楽に比較して低音成分が少くない。
 このため、最も衝撃感や振動感の効果の欲しいドキュメンタリー音ではあまり振動しないのに、音楽で過大な振動をしたり、振動して欲しくない人声で振動を発生してしまうなどの、ドラマの効果をぶち壊しにしてしまうような不都合を生じてしまう。


2.「収音」に対応する「収振」

2.1 音響信号と振動信号は別のもの
 
 前項で述べた不都合は、音響信号を振動信号として利用していることによるものである。日常的な経験では「音がしても身体で振動は感じない」のが普通である。その半面、ほとんど音はしなくても振動感が伝わってくるような場合もある。
 ぶつかったり殴られたりすれば、音は小さくても強い衝撃感を受ける。また、大地を揺るがすような大音響・大振動の場合もある。
 音と振動は関連性をもつが、音と振動は発生や伝達経路が異なる場合も多い。つまり音響信号と振動信号は区別されなければならない。

2.2 従来システム、ボディソニック・体感音響の問題点
 
 従来はボディソニック・体感音響装置の名称が示すように「身体で感じる音響」と考えられていたので音響信号を利用して振動を発生している。このため振動効果としては不十分なものであった。振動効果のためには「音響信号」ではなく「振動信号」でなければならないのである。
 新たな研究の成果は、振動感や衝撃感など、劇的な臨場感を再現する為のシステムとしては、ボディソニックでは不可なことを明らかにし、振動効果装置(Vibroeffect system) の開発を促した。

2.3 収音と収振の対比、収振が振動信号の基本
 
 オーディオ信号である「音響信号」は、マイクロホン等によって「収音」される空気振動である。これに対して「振動信号」は振動ピックアップなどによって「収振」される機械的振動のことである。「収振」とは、衝撃や振動が地面、床、椅子などを伝わってくる機械的な振動、即ち、振動信号を振動ピックアップ(機械振動-電気変換器)によって得たものである。
 収振する方法としては、収振すべき位置に振動ピックアップを付けて収振する。これは収音に於けるマイクセッティングと対応すると理解しやすい。こうして収振した信号が振動信号の基本になる。
 また、人間が感じ取っている状態に近い振動信号を収振をする方法として、ダミーボディに振動ピックアップを取りつけて行う方法も考えられる。これはダミーヘッドによるバイノーラル収音にも似ている。


3.振動信号の種類

 振動信号は、上述した振動ピックアップにより「収振した信号」の外に、「電子的に合成した信号」も振動信号として使用する。
 電子的に合成した信号は、周波数、レベル、エンベロープなどのパラメータを操作し、様々な効果を出すことができる。
 音響信号に十分な重低音信号が含まれておらず、期待する効果が得られない場合でも、電子的に合成した振動信号を加え、編集することにより、素晴らしい振動効果を発揮するようにすることができる。音響信号を編集加工して振動信号として使用する場合は、概して音と振動のつながりが良い面もある。
 また、音響信号に重低音域成分が十分に含まれている場合で、爆発音や衝突音などのドキュメンタリー音等を、振動信号として使用することもある。
 以上のことから振動信号には、下記のようなものがある。

@収振した振動信号
 振動ピックアップにより「収振」した信号。
A電子的に合成した振動信号 .
 周波数、エンベロープなどのパラメータを適切にして 「電子的に合成」 した信号。
B音響信号 .
 音響信号に重低音域成分が十分に含まれている 「爆発音や衝突音」 などの信号。
C音響信号をリメークした信号 .
 音響信号で、期待する効果に不足はあるが 「電子的に合成した振動信号を加えて、
 編集加工」 し、効果が上がるようにした信号。
Dその他 .

 上記@Dの振動信号があるのは、2.1 音響信号と振動信号は別のもの の項で述べたように、「音がしても身体で振動は感じない」のが通常である半面、「ほとんど音はしないのに振動感が伝わってくる」場合や、「ぶつかったり殴られたりすれば、音は小さくても強い衝撃感を受ける」場合があったり、「大地を揺るがすような大音響、大振動」の場合もあることなどに関連する。


4.システムの構築

4.1 ボディソニックから振動効果装置(Vibroeffect)へ
 
 このシステムの基本的な思想は、音響信号と振動信号の違いを明確にして、従来 「ボディソニック・体感音響装置」 であったものを 「振動効果装置」 として実現するものである。
 このために「振動信号のデータライブラリーを作成する。データライブラリを使用してターゲットソフトの振動プログラムを作成する。作成した振動プログラムを使用して振動効果装置を構築する」ことになる。
 このことをもう少し詳しく説明すると、
 
@収振した信号、電子的に合成した信号などによって、振動信号の「データライブラリ
 ー」を作る。
Aデータライブラリーを使用して、ターゲット・ソフト(映画などの作品)用の振動信号プ .
 ログラムを制作する。
B振動信号プログラムを使用して、振動効果装置を構築し、作動させる。 .
C振動効果装置の構築の仕方としては大別して2方式ある。 .
前者は、Aの振動信号プログラムを完全な形に作成するもの。 .
後者は、音響信号を採り入れながら、これに収振した振動信号や、電子的に合成した振
 動信号を加えながら振動効果を出すものである。
前者は、理論的に構成的にも完成度が高くスッキリしており、作品の完成度も高いもの
 が制作可能である。
後者はスッキリしないところもあるが、振動信号プログラムの制作が比較的容易で、短
 時日で出来るメリットがあり、ある意味で現実的である。
 実際、3Dサウンド・イリュージョンなどのアトラクションものでは全て後者に拠っている。映
 画においても、初期の段階では後者の方が現実的なシステムになる可能性が高い。但し
 将来的には前者のシステムになっていくものと思われる。
 その他、DVDなど、多チャネルのメディアでは振動信号の専用チャネルが設けられるケ
 ースが考えられる。
D後者のシステムで、電子的に合成する振動信号は、周波数、エンベロープ、レベル .
 などのパラメータを指定するコマンドによって、信号を発生する方法を実用化している。
 信号の発生方法はアナログ的にも出来るし、デジタル的にもできる。デジタル的には、マ
 イコンにるもの、DSPによるもの、メモリーに記憶させておき読み出すもの、などが考えら
 れる。
E後者のシステムである前記した3Dサウンド・イリュージョンでは、マイコンチップによる .
 信号発生が行われている。マイコンは前述したコマンドによって振動信号を発生すると
 ともに、メモリー(ROM)には、足音などを収振した振動信号データなども書き込まれてい
 て、これもコマンドによって呼び出せるようになっている。
 従って3Dサウンド・イリュージョンの「振動信号プログラム」は、マイコンに対するコマンド
 の羅列の形に近いものとなる。

4.2 振動信号ライブラリーの作成
 
 【第1図】は、振動信号ライブラリー作成の流れを示す。2項で説明したように、振動信号を「収振」した信号、電子的に合成した信号、重低音域成分が十分に含まれている爆発音や衝撃音などの音響信号をコンピュータ上で編集して、「振動データライブラリ」を作成する。
振動信号データライブラリーの作成
                 第1図 振動信号データライブラリーの作成

 振動信号には、
 
@振動ピックアップにより収振した信号。
A周波数、エンベロープなどのパラメータを適切にして電子的に合成した信号。 .
B音響信号で重低音域成分が十分に含まれている爆発音や衝撃音などの信号。 .
C音響信号で、期待する効果に不足はあるが、電子的に合成した振動信号を加えて、 .
  振動効果が上がるようにした信号。
Dその他。 .
 
 などがあるが、ライブラリーに使用する振動信号は、主として、@収振した信号、A電子的に合成した信号、B爆発音や衝撃音などの音響信号、を使用する (CDをライブラリーに使用することは、ほとんどない)。
 上記の振動信号を編集して「振動データライブラリ」を作成する。振動データライブラリは、振動データを編集するエディタプログラムなどと共にCD-ROMなどのメディアに記録しておくと便利である。
 その一方、振動信号は周波数が低く(10〜200Hz)、通常のオーディオ信号(20〜20000Hz)の1/100ぐらいの帯域幅で済むため、データ量を少なくすることができ、ROMなどの半導体メモリー上に置くことも可能である。(振動効果システムをファームウエア的に構築することも可能となる)。

4.3 ターゲットソフト用データの編集とプログラミング
 
 【第2図】は、ターゲットとなる映画ソフト用などの振動信号をプログラミングする様子を示す。ターゲットソフトの「音響信号」と「タイムコード」をコンピュータで取り込み、これらの信号に合わせて、「振動データライブラリ」と、ターゲットソフトの「音響信号」から振動信号を編集する。編集方法は、公知のデジタル的な手法により、レベルや長さ、周波数など、必要なパラメータを操作し、ターゲットソフトのシーンに合わせる。
 こうした編集作業によって「ターゲットソフト用の振動信号群」を作成する。この「ターゲットソフト用の振動信号群」をタイムコードに合わせ、適切なタイミングで出力する「制御プログラム」を作成する。
 この「ターゲットソフト用振動信号群」と「制御プログラム」を合わせ、CD-ROM上に書き込み、ターゲットソフト用の「振動信号ソフト」が完成する。
ターゲットソフト用振動信号プログラミング
              第2図 ターゲットソフト用振動信号プログラミング


5.システム例の説明

5.1 映画のシステム THX. DTS
 
 【第3図】は、公知の、映画における THX システム、DTSデジタルサラウンドシステムのブロックダイヤグラムを示す。映画フィルムから光学的にタイムコードを読み取り、このタイムコードによって映像と音響の同期がとられる。
 音声プログラムは CD-ROM に記録されており、システムはこれを順次デコードして音響信号として出力する。出力信号は、L(左ch)、C(センターch)、R((右ch)、Ls((左サラウンドch)、Rs(右サラウンドch)、LFE(低域効果ch:スーパーウーハ)である。
            (L、C、R、Ls、Rs の 5ch プラス、スーパーウーハ 1chで 「5.1ch 方式」 と呼ばれている)。
    映画のデジタルサラウンドシステム
 
               第3図 映画のデジタルサラウンドシステム


5.2 映画用振動効果システム例1
 
 【第4図】は、上記THX、DTSシステムに 「振動効果システム」 を加えたブロックダイヤグラムである。
 「振動信号ソフト」 を納めたCD-ROM上に 「ターゲットソフト用の振動信号群」 が全て収められているので、映画からの音響信号は、振動効果システム側には接続されていない。
 
    振動効果システム その1(DTS,THSと組み合わせた例1)
 
           第4図 振動効果システム その1 (DTS, THXと組み合わせた例1)


5.3 映画用振動効果システム例2
 
 【第5図】は、第4図のバリエーションを示すブロックダイヤグラムである。「音響信号」 のうちで 「振動信号」 として使える部分は、リアルタイムで使用するようプログラミングされた方式である。従って、L、C、R、Ls、Rs、LFEの 「音響信号」 が、振動効果システムに取り込まれる様になっている。
 音響信号が、振動信号として効果が不十分な部分には 「ターゲットソフト用の振動信号群」 から電子的に合成された信号を加え、メリハリのある振動効果が出せるようになっている。
 また「ターゲットソフト用の振動信号群」からの振動データも、適切に出力されるようにプログラミングされている。
振動効果システム その2(DTS. THSと組み合わせた例2)
            第5図 振動効果システム その2 (DTS, THXと組み合わせた例2)


5.4 3Dサウンド・アトラクションの例1
 
 【第6図】は、3Dサウンド・アトラクションなどの例を示すブロックダイヤグラムで、「振動振動群」 は全てCD-ROM上に納められている方式を示す一例である。
 イベントコントローラーは、タイムコードの発生、及び、プログラマブル・シーケンスコントローラーである。プログラムはタイムコードを基に進行する。シーケンサーの出力はリレー接点による出力と、RS-232Cによる出力がある。
 プログラムに従い、リレー接点出力によって、機器の起動、照明のON・OFFなど、アトラクションの進行のコントローラーになる。
 ハードディスクプレーアは、ハードディスクを媒体とした読み書き可能な 「デジタルオーディオ・プレーア」 である。イベントコントローラによって起動され、タイムコードに基づいて同期がとられている。
 振動効果システムはイベントコントローラからのシリアルデータ(RS-232Cなど)のコマンドによってコントロールされ、振動効果信号を出力する。
 
    3Dサラウンドアトラクションの1例(その1)
 
             第6図 3Dサラウンド(立体音響)アトラクションの1例 (その1)


5.5 3Dサウンド・アトラクションの例2
 
 【第7図】は、第6図のバリエーションを示すプロっくダイヤグラムである。「音響信号」のうちで「振動信号」として使える部分は、リアルタイムで使用するようプログラミングされた方式である。従って、L、R の音声信号(音響信号)が、振動効果システムに取り込まれる様になっている。
 3Dサウンドアトラクションの実際は、5分程度の短いものであり、振動データの量も少ないのでROM上に配置され、コマンドによって必要なデータが読み出され出力されるようになっている。
 イベントコントローラー、ハードディスクプレーアなど、全体的な構成は第6図の場合と同じである。
 3Dサラウンドアトラクションの1例(その2)
              第7図 3Dサラウンド(立体音響)アトラクションの1例 (その2)


5.6 振動系
 
 【第8図】は電気的な振動信号を機械振動に変換するボディソニック用トランスデューサ(電気−機械振動変換器)の一例を示す図面である。
     ボディソニック用トランスデューサ Vt7
              第8図 ボディソニック用トランスデューサ Vt7


 【第9図】は、ボディソニック用トランスデューサを映画用の椅子などに取りつけた場合の1例を示す図である。
     ボディソニック用トランスデューサを劇場椅子に取り付けた1例
         第9図 ボディソニック用トランスデューサを劇場椅子に取りつけた1例


5.7 3Dサウンドアトラクション用などの簡易システムについての補足説明
 
 4項で述べた 4.1 ボディソニックから振動効果装置(Vibroeffect)へEの簡易的な形が可能なのは、振動信号は周波数が低く、通常のオーディオ信号の1/100ぐらいの帯域幅で済むため、データ量を少なくすることができ、ROMなどの半導体メモリー上に置くことも可能だからである。
 3Dサウンド・アトラクションは、規模が小さく、10分以内程度の短時間であることなどもあり、振動効果システムはマイコンレベルで構築可能である。また、振動信号群は、特にターゲットソフト(作品)用に編集しなくても、Eで説明したようなマイコンレベルの振動効果システムを、いろいろなソフト(作品)に共用できる。
 いろいろなソフト(作品)に共用できるのは、3Dサウンド・アトラクションでは音響信号そのものが良く出来ているので、音響信号に電子的に合成した振動信号を加えることによって、振動信号として充分効果を上げることができる為でもある。この方式は、アミューズメント、ゲーム、映画、その他にも応用が可能である。下記に3Dサウンドアトラクションの実際の例を紹介する。


浅草花屋敷 「ゴーストの館」 3Dサウンドアトラクション
 
 「今から50年程前、ヨーロッパのとある町で幸せに暮らしていた親子4人が呪われた落雷によって壮絶な死を遂げた。それ以来、彼らの住んでいたこの館は不可思議な超常現象が起る「ゴーストの館」となった。そして今日もまた、それと知らずに館を訪れてしまった者がいた…」。
 部屋の中や通路に、ストーリーの予備知識を与える、事故が掲載されている古い新聞、遺品、古びた写真などが展示されていて、アトラクションが始まる前から、ゴーストの館の雰囲気に浸る。
 アトラクションはゴーストの登場を、3Dの立体音響で表現し“体感振動システム・バイジック”によって、忍び寄り駆け回る恐怖の足音が振動で伝わり恐怖感を倍加する。そしてシャンデリアが落ちてくる衝撃感を迫真の臨場感で再現しクライマックスに達する。


富士急ハイランド 「処刑の館」 3Dサウンドアトラクション
 
 体感音響振動を取り入れた3Dサウンドアトラクションの初期作品です。不朽の名作といわれ、この作品がきっかけとなって全国のアミューズメント施設に3Dサウンドアトラクションが広がっていきました。音だけのアトラクションは世界でも初めてであり、現在では中国、香港、シンガポール等海外でも人気アトラクションとして活躍しております。

3Dサウンドアトラクション
 
 入り口や室内には、ストーリーの雰囲気を高める飾り付けやインテリアがあります。アトラクションが始まると室内は薄暗くなり、物語りの3Dサウンドをヘッドホンで聴きます。
 バイノーラル録音を基本にした 360°の立体音響と、高性能バイブロトランスデューサを使用した体感音響装置Visicによるドキュメンタリー音の臨場感再現効果により、没我の状態で想像力をかきたて、高いアトラクション効果を発揮します。


6.まとめ

 以上述べてきた「振動効果システム」の効果を、アメリカの映画制作関係者に示すと素速い反応と高い関心を示し、潜在ニーズの大きさを感じさせる。しかし、この分野に進出するには、尚多くの準備が必要である。準備すべきことは沢山あるが、例えば、スタジオで映画制作者が使用可能な、振動プログラムを制作するためのシステムが必要である。そして映画を上映するためのシステムが必要である。そして、営業戦略が重要であろう。
 映画の5.1chのソフトはDVD化されている。いずれホームユース化への対応も必要になろう。DVDはテータ量が多く、多チャネルに対応している。このチャネルの一つに振動信号が録音されている所まで漕ぎ着けるのは長い道程だろう。

 映画の他、アミューズメント、ゲーム、その他のアトラクションなどにも応用の可能性がある。3Dサウンド・アトラクションなどには、既にこの技術の一部が応用され、成果を上げていることは前述した。
 振動データライブラリをメモり上に置いて、プログラムのコマンドによって必要な振動データをデコードして出力する、マイコンシステムの形を取るのが一般的と思われが、DSPにする方法もある。電子的な振動信号の合成(発生)だけなら、アナログ回路によっても、さして難しくはない。
 上記をカード化し、パソコンをベースに、サウンドカード、振動効果カードなどを装着し、システムを構成する方法もある。アミューズメント、ゲーム、アトラクションなどには好適なシステムであろう。

 第1章の 「ボディソニックによるドキュメンタリー音などの臨場感再現効果」 に始まり、第2章の 「振動効果装置に至る体感振動の概念と技術の変遷」、第3章の 「振動効果装置」 まで記し、「ボディソニックの臨場感再現効果技術」 について述べた。


参考文献

1)小松 明:体感音響振動の効果メカニズム試論
  −ボディソニックによる音楽療法の効果は何故起こるのか−
  日本バイオミュージック学会誌 1992, Vol.7, P28-36
2)小松 明:体感音響装置の振動と低周波振動公害との相違について
  −情報を持つ体感音響振動の有用性についての概念を体系的に捉えるための考察試論−
  日本バイオミュージック学会誌,13:48-55,1995
3)小松 明:音・音楽・振動と眠り −情報を持つ体感音響振動の誘眠効果考察試論−
  「睡眠と環境」日本睡眠環境学会誌 第3巻、第1号 1995.12, P108-116
4)小松 明:音楽によって患者の心を癒す試み
  日本総研 '97看護部門、特別編集号「癒しの環境読本」1997,5 P52-62
5)小松 明:身体で聴く音響装置、ボディソニック・システム
  日本オーディオ協会誌 (JAS JOURNAL) 1981,Vol,21 No.6, P54-60


 
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