第2章 振動効果装置に至る
       体感振動の概念と技術の変遷

      バイブレータ(Vibrator) →
              ボディーソニック(Vibroaudio) → 振動効果(Vibroeffect)

                 たいかん音響研究所 小松 明
 
1999年3月 .
 
身体に振動を付与する技術概念の変遷

 身体に振動を付与することにより得られる効果と、その概念や技術の変遷は、
   1.バイブレータ      (Vibrator)
   2.ボディーソニック    (Vibroaudio system
   3.振動効果システム  (Vibroeffect system
 と辿っており、バイブレータなどの単なる物理的・生理的な振動から、ボディーソニックになって、振動が情報を持つようになり表現力を拡大した。それは音楽療法への応用も可能とし、心理的、美的・知的感性に訴え、精神性に効果を及ぼすものへと発展した。
 振動効果システム(Vibroeffect System)は、それをさらに発展させ、現在到達している体感振動技術の先端に位置する概念・技術である。以下に、その変遷と概念の位置付けを簡単に述べる。


第1期 バイブレータ(Vibrator)

 揉みほぐすなどの生理的効果を目的とする、単なる物理的な振動である。“振動が情報を持つ”という概念はないので、音と無関係な振動しか発生できず、爆発音やエンジン音などの振動感の表現に使用しても、音と無関係な違和感のある振動しか発生できず、臨場感の再現は出来ない。バイブレータはバイブレータの振動しか発生できず、エンジン音や爆発音の振動を発生することが出来ないのは当然のことである。
 ハードウエア的には、電磁式振動器、振動モータ(偏芯した錘を付けたモータ)などが使われるが、現在では振動モータが使用されている場合が多い。


第2期 ボディソニック(Vibroaudio)

 ボディーソニックが画期的だったのは、振動信号としてオーディオ信号を使用した点であった。オーディオ信号によってボディーソニックが発生する体感振動には音の情報が含まれており、エンジン音ではエンジンそのものの振動を発生し、爆発音では爆発そのものの振動を発生することが出来た。音楽では音の高低、強弱、リズム感を忠実に再現でき、表現の可能性を大幅に拡大することが出来た。
 ハードウエア的には、主として、ダイナミック形の電気-機械振動変換器が使われ、入力信号を忠実に体感振動に変換する。

1.音楽の場合
 振動信号として音楽を使用した場合、音楽の情報である、リズム感、周波数、強弱、などが体感振動となって体感される。音とともにこの振動を体感すると、陶酔感や感動を深める効果がある。
 リラクセーション効果とともに、生理的効果も指摘されており、音楽療法への適用も多数、報告されている。

2. ドキュメンタリー音の場合
 車のエンジン音、衝突音、噴火などの爆発音、etc…。こうしたシーンの「振動感や衝撃感を伴う音」を振動信号として使用した場合、オーディオ信号の条件がよければ、迫真の臨場感を再現する1)ことができる。体感音響は通常のオーディオ装置だけでは真似のできない臨場感の再現を可能とした。
 これらの効果から、科学万博などのイベントからアミューズメントなど、映像と組み合わせた様々な応用もされてきた。

3.ボディーソニックの不完全性と問題点
  −オーディオ信号を振動信号として使用することにより起こる不都合−
 以上に述べてきたごとく、バイブレータ(Vibrator)からボディーソニック(Vibroaudio)に進化して振動が情報を持つようになり、表現力は画期的に拡大した。しかし、下記のような不完全さ、不都合も生じ、その解決を迫られている。
 ボディーソニックの不完全性から起こる問題点の根本は 「本来はスピーカで再生されるべきオーディオ信号を“仮に”振動信号として使用している」 ことによる。

3.1 期待する振動感が得られない
音楽では
 音楽療法で使用されることの多いクラシック音楽では、必ずしも十分な低音成分が含まれているとは限らず、ボディーソニックとしての効果が得られない場合が多々ある。音楽は本来、体感音響振動の効果を計算に入れて作曲されているわけではないので、このような不都合が生ずるのは当然の帰結でもある。
ドキュメンタリー音では
 振動や衝撃感を伴う現象であっても、その発生する音に低音成分が少ないと振動しない。このため、期待するような振動の効果が得られない。
 その反面、衝撃感や振動感を伴わない現象でも、その発する音に低音成分が含まれていると振動を発生してしまい、不自然になってしまうことがある。

3.2 振動しないはずの人の声などで振動してしまう
映画、ドラマなどでは
 振動や衝撃感のない音、例えば人の声(特に男声)で振動し、著しく不自然な感じになってしまうばかりでなく、ドラマをぶち壊しにしてしまう。人の声ばかりでなく、振動などしないはずの普通の音でも、低音成分が含まれていると振動し、不自然な感じになってしまうことがある。


第3期 振動効果装置(Vibroeffect System)と
     振動音楽(Vibromusic)


 前項で述べたように、従来はボディーソニックによって「本来はスピーカで再生されるべきオーディオ信号を"仮に"振動信号として使用」していたため、十分な効果を出せなかったり、さまざまな不都合が起こった。
 新たに開発された振動効果システム(Vibroeffect System)では「オーディオ信号を"仮に"振動信号として使用」するのではなく、「専用の振動信号」を使用することによって、従来のような不都合を解決する開発がなされている。このため、システムとして最大の効果を発揮できる。
 ハードウエア的には、従来、ほとんど不可能であった超低域16Hzまでの再現が可能な高性能 Vibro Transducer Vt7、Vp6が開発され2)、これを使用している。               Vt7           Vp6

1.振動効果装置(Vibroeffect System)
 電車やSLの走る音、車のエンジン音、車などの衝突音、噴火や大砲などの爆発音、地震などでビルが崩れる音や山崩れの音…。こうしたシーンの“振動感や衝撃感を伴う音、ドキュメンタリー音”に“体感振動”を付与すると、通常のオーディオ装置では真似のできない迫真の臨場感を再現することができる。これがVibroeffect Systemによる効果の一例である。
 従来は、ボディーソニックによって、本来はスピーカで再生されるべきオーディオ信号を仮に振動信号として使用していたため、十分な効果を出せなかったり、さまざまな不都合が多々起こった
     
 新たに開発された振動効果装置Vibroeffect Systemは、オーディオ信号を仮に振動信号として使うような不完全なものではない。
 例えば、マイクによる空気振動の収音ではなく、振動ピックアップによって振動信号を収振し、この収振した信号によって体感振動を発生するので、完全な効果を発揮することができるのである。


2.振動音楽(Vibromusic)
 従来の音楽には体感振動の概念はなかったが、Vibromusicは体感振動を必須の要素とする音楽である。体感振動を時間の進行の中で、振動の強弱、長短、周波数、波形、重なりなど、一定の法則に基づいて組み合わせ、身体の触振動覚に訴える美を表現する。
 従来の音楽と比較すると、Vibromusicは生理的感覚に働きかける要素が高く、深い恍惚感、陶酔感やリラクセーション感が得られ易い。また、人間の根源的なものに訴える比率が高い。
 体感振動の周波数帯域は、凡そ16Hz〜150Hzを使用するが、この中で16.351Hz(C0)〜48.999Hz(G1)の音域の体感振動は、深い恍惚感や陶酔感をもたらす効果が高い。
 Vibromusicには
   @音と振動によるもの(Vibromusic S)
   A振動のみによるもの(Vibromusic V)
 の2種類があり、振動の要素のウエイトが高いものほど、聴覚障害者も等しく享受することができる。
                                   振動音楽(Vibromusic) へのリンク


参考文献
 1)小松 明:身体で聴く音響装置、ボディソニック・システム
   日本オーディオ協会誌 (JAS JOURNAL) 1981,Vol, 21 No.6, P54-60
 2)
体感音響装置と振動トランスデューサ Vt7, Vp6 体感音響装置VISICによる5.1ch再生DVDチェア
   日本オーディオ協会誌 JAS journal 2002年 Vol.42, No.3, P9-13



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第1章 ボディソニックによるドキュメンタリー音などの臨場感再現効果

第2章 振動効果装置に至る体感振動の概念と技術の変遷

第3章 振動効果装置
 (Vibroeffect system)


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