![]() エコニック、ボードスピー カ、パネルスピーカ 壁全体が音源となる新しいSP エコニック・サウンドトランスデューサ エコニック・サウンドトランスデューサの特長と性能 面音源を実現させた 新しい 振動ユニット 壁自体が音源となる4チャンネル音場再生に適した ボードスピーカについて 音づくりの新しい可能性を示す 全面的に改良された GTボードスピーカ ボードスピーカを応用した製作 ポスター・パネルスピーカの作り方 写真を振動させて音を出す パネルスピーカ PS-5 EWI 技術開発の先駆 エレキサックス |
1.リスニングルームの夢 室内のどこを見まわしも大げさなスピーカボックスや機械くさいホーンは見あたらない。壁や天井を見ても音の出てくる穴やサランネットなど、スピーカを埋込んだ跡はどこもない。 それなのにあるときは地軸を揺るがす重低音が圧倒的な迫力で覆い被さるように、あるときは繊細をきわめたハーモニーが天上の音楽を奏でる。驚異的な音の広がりと音に包み込まれるような音場空間… 目の前に大オーケストラがあるかと見紛うばかりだ。“音はどこから聴こえてくるのだろう…?” 驚くべきことに壁や天井そのものがスピーカになっていて、壁や天井全体から音楽か聴えるのだ。私はその音の中にひたり、その音の中に包み込まれる… 何と素晴らしいリスニングルームなのだ。 これが未来のリスニングルームです。こんな夢のリスニングルームの夢を画き、その夢に憑かれて、筆者は壁や天井そのものから音楽再生を行う研究を続けてきました。 こうして生れだのが壁板や天井板を振動させて壁や井全体を音源にする“ボードスピーカ”です。 “壁や天井全体が音源になる新しいSP”と題して、本誌昨年1月号および9月号で発表させて頂きましたところ、たいへん反響を呼び熱心な多くの読者諸兄よりお問合せを頂きました。紙面をお借りして厚くお礼申し上げます。 その後、研究はさらに進み,第1図 a、b に示すような、すぐれた特性をもつ4チャンネルステレオ用としても好適な高性能の製品(標題のカット写真)が生れるに至りました。もう、スピーカホックスの要らない時代が始まろうとしています。そこでボードスピーカの各種方式とその性能などを調べ、あわせて技術的発展の跡をも簡単にふりかえって、少しでも多くの読者諸兄にボードスピーカを知って頂く為のご参考に供したいと思います。なおボードスピーカは、まだ歴史が浅いため製品の種類が少ないので、製品にはなっていなくても、試作・実験されたもの、技術上重要なものなどをも掲げてあります。 2.ボードスピーカとは コーン紙を振動させるスピーカがコーンスピーカ、ホーンロードをかけるスピーカがホーンスピーカと呼ばれるように、壁板や各種パネルなどのボード(板面)を振動させて音響再生するスピーカをボードスピーカと呼びます。ボードスピーカは構造的には、電気振動 → 機械振動変換器を作り、その変換器で得られた振動エネルギーを壁板に伝え、壁板を振動させて音響再生を行ないます。 このため壁板はコーン紙などと同じように振動板として働くと同時に、バッフル板としての働きをも兼ねます。音響的には,壁板などを振動させるため、従来のスピーカに比べて振動板面積がケタ違いに大きくなり、非常に大きな広がりのある面音源になります。この振動板面積が大きいということが多くの効果をもたらします。 しかし欠点として、ボードスピーカは重い壁板などを振動させねばならないため、どうしても能率の低いものとなってしまいます。しかし最近ではテレピなどのイヤホンジャックに接続しても音が出るようなかなり高い能率のものもできるようになってきました。だいぶ前置きが長くなりましたが、次にボードスピーカの各種方式と構造・性能などをお話ししましょう。 3.電磁型平衝接極子方式 これは第2図に示すような構造で、ひと昔まえに使われたいわゆるマグネチックスピーカと同じ原理に基づいています。マグネチックスピーカのコーン紙部分をとりのぞき、壁板を駆動するように構造を改めたものと考えることができます。しかしこの構造の湯合、図に示すようなモードで壁板が振動するため、かなりムリのかかった状態となり、あまり良い音を出すことはできません。 スピーカの歴史がマグネチック型からダイナミック型へと変っていったように、ボードスピーカもより良い再生を求めてマグネチック型からダイナミック型(ムービングコイル型)へと進んでいきます。以下にムービングコイル型の各種方式を述べてみましょう。 4.シングルダンパ・センターセッティング方式 第3図に示すようなもので、原理的にはダイナミックスピーカをマグネット部分とボイスコイル部分だけにして、ボード(壁板)に振動を伝えるようにしたものと考えれば解りやすいと思います。 この方式はわりあいすぐれた方式で実用になる音を再生することもできます。とくに高音域はすぐれていて10KHz以上の音を再生することもできます。 一方、その構造はダンパで重い磁気回路(マグネット,ヨークなどより成る部分)を支えねばならないため、かなり堅くする必要があります。
もしやわらかくすると第4図に示すようにボイスコイルがヨークやマグネットにふれてしまいます。さらにやっかいなことは(これが一番問題点)ボードスピーカを壁板に取付けるとき、ボードスピーカを手に持って取付ネジを壁板に強く押しあてて、ボードスビーカをグルグル回して壁板にネジをネジ込まねばならないことです。このためダンパ部分にはかなり強い力が加わります,そこでダンパにはこの力に耐えるだけの強度を持たせなければなりません。つまりダンパを固くする必要が生じます。ダンパを固くすると低音域の再生ができなくなります。このため低音再生はできません。 これを改めて、取り付け時に不要な力がダンパに加わらないようにしたのが、次に述べる方式です。 5.シングルダンパ・プレートセッティング方式 ![]() この方式による製品は、昨年本誌1月号(p136)および9月号(p276)で筆者が発表しておりますので、ご存知の読者も多いと思います。また昨年のオーディオフェアの会場でご覧になられた人もおられると思います。エコニック・サウンドトランスデューサ WA‐3020 としてカワセ物産より発売されたものです。 第5図にこの方式の購造を示します。最大の特徴は何といってもそのプレート(取付板)にあります。プレートがあるため、壁への取り付けはドライバでネジ止めすればよいので、取付時に不要な力がダンパに加わることがありません。このことはシングルダンパ・センターセッティング方式における大きな欠点を解消したもので、このためダンパをかなりやわらかくすることができ、低音の再生もしやすくなります。 また、プレートは単に取付け板としての役目だけではなく、放熱板としての働きもします。このため、この方式によるボードスピーカは小型の割には高い入力電力に耐えることができます。 第6図に周波数特性例を示します。以上のようにこの形式はかなりすぐれた点をもっていますが、取り付ける壁板が薄い場合、プレートで高音域が吸収され高音域が出にくくなりますので注意が必要です。 また,本方式はシングルダンパあるため、第4図で述べたように磁気回路の重さを一枚のダンパで支えなければならない為、ダンパをあまりやわらかくすると、ボイスコイルがヨークに触れる虞があります。この為,ダンパをあまりやわらかくすることはできません。 以上の事情により、シングルダンパ・プレートセッティング方式においては、取り付ける壁板の材質、厚さ、サンの入り具合、取付位置、面積などにより、周波数特性がかなり変ってきます。使用個数を多くして(少なくとも4コ以上……数が多い程良い)、比較的面積の広い壁板に充分な注意を払って取り付けた場合は想像以上に良い音響効果を得ることも可能です。小型軽量であること、壁の裏側から取付けられること、面音源で音の影がないなど、ボードスピーカ特有の利点が買われて、現在喫茶店などのBGM用として多く使用されています。 6.シングルダンパ・フイルムセッティング方式 この方式は主として高音域再生の改善と、取付上の問題を改善するために考えられたものです。 前に述べたプレート・セッティング方式ではプレート(取付板)で、高音域の吸収が起りやすく、高音再生が困難であるという欠点がある為、プレートを使用しないでフィルムで壁板に接合させ、高音域再生を可能としたものです。各部の材質・構造・寸法などに注意を払えば、相当高音域まで再生でき、実験的には20KHz以上の高音まで再生することができました。 このため、ツィータにたいへん適した方式といえます。ツィータであれば低音の再生は問題になりませんから、ダンパを固くすることができ、シングル・ダンパで十分ということになります。この方式のもっとも特長的なところはそのフィルム部分です。フィルムを適当な材質と厚さにすることにより、高音域の再生を可能にすることと同時に,壁面への取付も容易にします・ 第7図のようにフィルムのうえに特殊な粘着剤を使用した両面接着テープを貼り付けておくことによって、壁板への取付けは、押しつけて貼り付ければOKで、ネジなどいりません。このため、壁板にネジの穴があくこともなく、ボードスピーカを取りはずした跡はまた元のままになります。 これを応用して、プレート・セッティング方式で両面接着テープを使って壁に貼り付けようとしても、ブレートと壁板には僅かなそりや凸凹があり、両者は密着しない為、ボードスピーカの重みで時間が経つと落ちてしまいます。 フィルム・セッティング方式の湯合は、フィルムがやわらかい為、壁面のわずかなそりや凸凹にも追従して密着する為、壁面にしっかり固定され落ちることはありません。またフィルムの面積を大きくすることにより相当な重量でも支えることができます。 ツィータなどには非常にすぐれた方式であると同時に、壁にネジ穴を明けずに取付けられるなどすぐれた特長のある方式ということができます。 7.デュアルダンパ方式 いままでに述べてきた各種方式には、それぞれいろいろな長所や短所がありましたが、その中で一番大きな間題のひとつが、第4図で示した磁気回路の重みでボイスコイルがヨークにふれてしまうので、ダンパをやわらかくできず、低音域の再生ができないことです。 この問題を解消したのがデュアルダンパ方式です。デュアルダンパ方式は、磁気回路の前面と後面にそれぞれダンパを設けて、第4図の場合のような不都合が起らないようにしたもので“地軸を揺るがす重低音”の再生を可能にするものです。 デュアルダンパ方式には、その取付形式により 1.デュアルダンパ・プレートセッティング方式 2.デュアルダンパ・フィルムセッティング方式 3.デュアルダンパ・センターセッティング方式 などがありますが、このなかでもっとも性能のすぐれた、デュアルダンパ・センターセッティング方式をさらに改良した、デュアルダンパー・センターセッティング方式取付ネジ貫通型について次に詳しく調べてみましょう。 8.デュアルダンパ・センターセッティング方式取付ネジ貫通型 この方式によるものは写真で示すような製品が、ニッケイ電子よりGTボードスビーカ、DS-8000シリーズの名で発売されています。 第8図 a-f の周波数特性をご覧ください。16Hzから 16kHzぐらいまで、十分再生しています。壁板に取り付けたもの、大きな板に取り付けたものは特性もフラットです(a,b,cなど)。また発泡スチロールに取付けたものは高い音圧レベルを示しています(d)。 振動板面積が小さい(f)の場合でも16Hzの重低音を再生しています(但し、山や谷が少し大きくなる)。この性能の良さは単に特性上だけではなく、聴感上でもたいへんよい結果を得ています。これはデュアルダンパ・センターセッティング方式、取付ネジ貫通型の性能がすぐれていることを物語っています。 この方式による構造を第9図に示します。中心部に貫通する穴のある磁気回路を前面ダンパと後面ダンパによって支えています。前面ダンパだけですと、シングルダンパとなり、第4図で説明したように磁気回路が垂れ下がり、ヨークがボイス・コイルに触れるおそれがありますが、後面ダンパがあるため垂れ下がりません。そして中心部にネジが通っています。 これを例えていえば、磁気回路という重い荷物を、前面ダンパと後面ダンパという、ふたつの車輪にのせ、中心にネジというシャフトをはめたのとよく似ています。このため、荷物の荷重はシャフトに加わり、ふたつの車輪で支えられ安定します。これがデュアルダンパ・センターセッティング方式の状態です(シングルダンパは、今の例えの車輪を、ひとつ外してしまったような状態です。このため荷重で頬いてしまいます。これが第4図で説明した状態です)。
このようにデュアルダンパ方式磁気回路の重さで垂れ下がることがありませんので、ダンパを十分やわらかくすることができます。このため“地軸をゆるがすような重低音”の再生も可能になると同時に、大きな強力な磁気回路にすることができるため、能率を高くできるというわけです。しかし、これだけではまだ十分ではないのです。 シングルダンパ・センターセッティング方式の項で説明した壁板への取付時に、ダンパに不要な力が加わるという問題です。いくら磁気問題の荷重に耐えられるといっても、取付け時に不要な力が加わるのでは、結局ダンパを固くしなければならなくなるので、無意味になってしまいます。 この問題を解消しているのが円筒部分です。一見、何でもないようなこの円筒部分があるために、取付けネジをボードスビーカの中心部に貫通させることができます。このためボードスピーカを壁に取付けるときは中心部の取付ネジをドライバで回せばよく、ダンパには不要な力は加わりません。従って、ダンパは十分やわらかくしておくことができ、重低音を再生されるわけです。 この方式の上でいろいろな問題を解消した技術上、最も重要な部分、それが実にこの円筒部分なのです。 ここで高音域の問題に目を転じましょう。シングルダンパ・センターセッティング方式の項で説明しましたが、センターセッティング方式は高音再生特性がすぐれています。10KHz以上の再生は比較的容易です(但し、材質その他十分な注意の必要なことは言をまちませんが)。 GTボードスピーカ・DS-8000シリーズでは、このセンターセッティング方式を採用しているため、16kHzの超高音の再生も可能となっているわけです。 つまり“デュアルダンパ・センターセッティング方式”は、低音特性のすぐれたデュアルダンパ方式と高音特性のすぐれたセンターセッティング方式をプラスしたものです。そして、上記方式をさらに改良して取付け時にダンパーに不要な力が加わらないよう円筒部を設けたのが“デュアルダンパ・センターセッティング方式、取付ネジ貫通型”というわけです。 ボード・スピーカを取り付けると、壁や家具にネジ穴があいてしまいます。これはたいへん具合の悪いことですが、第10図に示すようにDS-8000シリーズ用の取付けアタッチメントを使用するとネジ穴を明けずに取付けることができ便利です。これはフィルムセッティング方式の応用です。 DS-8000シリーズには別表に示すようにいろいろな用途に合せて4機腫があります。 この中でちょっと興味があるのはDS‐8080です。最近は小型のパワーアンプ IC が、出まわっていますが、実際にメインアンプを作ってみると IC は小型なのに出来上ったアンプは小型になりません。 これは、電源トランス始めとする電源部が小さくならないためです。8Ω負荷の電源トランスレスのOTLアンプを作るとなると、パワートランジスタはベラボウにハイパワーのものが必要になってしまいますが、DS-8080はインピ←ダンスが80Ωのために、第11図に示すような比較的小さなパワートランジスタで 20W、電源トフンスレスのOTLアンプができます。ケミコンも比較的小型ですから小型軽量のメインアンプを作ることが可能です。
![]() これは少し余談になりそうですが、DS-8000シリーズは能率も高くなっている為、テレビのイヤホンジャックに挿し込んで使用することができます。 小さな卓上型のテレビなどは一般的に小型スピーカしか付いていないため、あまり良い音がしませんが、ボードスピーカに切換えるとビックリするほど良い音になります。コマーシャルなど、録音の良いのと悪いのがはっきりと分かるようになり、コマーシャルを見るのが楽しみになったほどです。 そして音の広がりがあるため、チョット映画館にでもいるような感じが出せます。ドラマなどでも録音の良いのと悪いものの差がハッキリ分かります。 よりよい音場効果・音響空間を求めて、オーディオ界は4チャンネルステレオ時代を迎えました。音場効果のすぐれている点では,ボードスピーカは最高です。 また、4チャンネルともなると大きなスピーカボックスを4コも置かねばなりません。2チャンネルでも、持て余していたスピーカボックスが4チャンネルになったのでは… そんな点でもボードスピーカはすぐれています。なにしろスピーカボックスが要らないのですから…。ボードスピーカには、この他にも各種の方式がありますが、紙数の都合もあり割合させて頂きます。 最後に、新しい音楽再生方式・ボードスピーカが、より大きく育っていくよう、読者諸兄のご意見、ご批判、そしてあたたかいご支援を切にお願い申し上げるしだいです。 ニッケイ電子株式会社 技術部 無線と実験 1971年3月号 【参考文献】 1)小松 明:壁全体が音源となる新しいSP、エコニック・サウンドトランスデューサ 無線と実験誌 1970,1月号, P136-139 2)小松 明:面音源を実現させた新しい振動ユニット、エコニック・サウンドトランスデューサ の特徴と性能 ラジオ技術誌 1970,4月号, P251-254 3)小松 明:壁自体が音源となる 4チャンネル音場再生に適したボードスピーカについて 無線と実験誌 1971, 3月号, P123-128 4)小松 明:音作りの新しい可能性を示す 全面的に改良された GTボードスピーカ ラジオ技術、1971年3月号、P265〜269. 5)小松 明:ヘッドホンとの併用で重低音を体験できるオーディオクッション・ディスコターボとは? ボディソニック MODEL24 ラジオ技術、l978年4月号、P268〜270. 【注】 ボードスピーカは、後にボディソニック(体感音響装置)を開発するにあたって重要な基本技術に なった。ラジオ技術、l978年4月号掲載の「ヘッドホンとの併用で重低音を体験できるオーディオクッシ ョン・ディスコターボとは? ボディソニック・MODEL 24」 のドライバユニット(振動素子)として、ボードスピ ーカが使用されている。 04.1.29 Copyright (C) 2003-2012 Bodysonic Laboratory, All rights reserved. |